プレワークアウトは危険?ピリピリの正体と、本当に量を守るべき成分

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仕事のあと、21時からジムに入る。最初の種目は元気なのに、後半になると集中が切れて、予定していたセットを削って帰る日がある。

それで「プレワークアウト」を調べた。トレ前に飲むと集中力とパンプが上がるらしい、と。ところが検索した瞬間に手が止まります。「ピリピリして怖い」「動悸がした」「初心者はやめとけ」。効きそうな話と危なそうな話が同じ熱量で並んでいて、どっちを信じればいいのか分からない。

結論から言うと、この手の記事で並べられる「副作用」は、危険度の順番が実際とは逆になっています。いちばん派手で怖い体感ほど体には無害で、いちばん地味な変化のほうが長い目で見て損をする。この記事では、体感の一つひとつが何から来ているのかを分解して、「本当に量を守るべき成分はどれか」を先に確定させます。

はじめにお断りしておきます。
筆者は医療従事者ではないため、診断や治療に関する助言は行いません。この記事は体験談ではなく、公開されている研究や公的機関の資料を調べた上での解説です。持病がある方(特に心臓・血圧・不安症状に関わるもの)、薬を飲んでいる方は、カフェインを含むサプリメントを始める前に必ずかかりつけの医師にご相談ください。

結論:怖がる順番が逆になっている

先に全体像を出します。プレワークアウトで起きるとされる「副作用」を、原因ごとに分けるとこうなります。

起きること 正体 実際のところ
肌がピリピリ・チクチクする β-アラニン 一時的。害の報告はない
顔や首が赤くなる・熱くなる ナイアシン(ビタミンB3) 血管が広がるだけ。数十分〜数時間で戻る
動悸・そわそわ・眠れない カフェイン 量とタイミングの管理が要る

派手に体感があるのは上の二つです。そして、上の二つは体を壊しているわけではない。逆に、いちばん「よくある成分」として流されがちなカフェインだけが、量を間違えると実害につながります。

つまり多くの人は、驚くほうを怖がって、管理すべきほうを素通りしている。ここを入れ替えるだけで、判断は一気に楽になります。

「体感が強い」は「体に悪い」ではない

ピリピリの正体はβ-アラニン

飲んで15分ほどで、顔・首・手のあたりがチクチクしてくる。初めてだと本気で焦ります。

これはパレステジア(知覚異常)と呼ばれる現象で、原因はβ-アラニンという成分です。持久的な高強度運動のパフォーマンスを支える目的で入っています。

国際スポーツ栄養学会(ISSN)がβ-アラニンについてまとめた見解では、推奨される用量の範囲において、健康な人での副作用として報告されているのはこのピリピリだけで、これによる有害な影響は確認されていない、とされています。しかも量に比例して出るので、1回量を小さく分ける(0.8〜1.6g程度ずつ)か、徐放性のタイプに変えると軽くなることも分かっています。

つまり、「ピリピリするから体に悪い製品だ」という推論は成り立ちません。一度に多めに入っただけです。

顔が赤くなるのはナイアシン

もう一つよくあるのが、顔・首・胸が赤くなって熱っぽくなるやつです。これはナイアシンフラッシュと呼ばれます。

ナイアシン(ビタミンB3のうちニコチン酸のかたち)には血管を広げる作用があり、皮膚の血流が増えて赤くなる。かゆみや熱感を伴うこともありますが、通常は数十分から数時間で自然に引きます。不快ではあっても、これ自体に害はないとされています。

ちなみに、この赤みを「効いている証拠」と受け取る人もいますが、赤くなることと、トレーニングの成果が上がることは別の話です。血管が広がった皮膚の色が変わっているだけで、筋肉に何かが起きたわけではありません。

パンプ感は狙って入れられている

飲んだ日に妙にパンプする、というのも珍しくありません。これはシトルリンやアルギニンといったアミノ酸が入っているためで、こちらは狙いどおりの効果です。体感としては気持ちいい部類なので不安になる人は少ないですが、「効いてる感」の正体がこれだと知っておくと、成分表を見る目が変わります。

ここまでのまとめ

派手な体感は、成分の性質としてそうなるだけで、体に負担がかかっているサインではありません。怖いのは体感の強さではなく、量の管理が必要な成分が、量の分からない形で入っていることです。

量を守るべきなのはカフェインだけ

目安になる数字

カフェインについては、参照できる数字があります。

欧州食品安全機関(EFSA)は2015年のリスク評価で、健康な成人について1回200mg・1日400mgまでなら健康リスクが高まるとは考えにくいとしています(妊娠中・授乳中の方は1日200mgまで)。

日本には上限値の設定がありません。カフェインの感受性には個人差が大きいためで、そのかわり内閣府食品安全委員会や農林水産省が、海外機関の数値を紹介するかたちで注意喚起をしています。

コーヒー1杯(150mL)でだいたい90mg前後と言われます。プレワークアウト1杯のカフェイン量は製品によって大きく違い、100mg台のものから300mgを超えるものまであります。だから「1杯なら大丈夫」という一般論は成り立ちません。見るべきは杯数ではなく、その製品に何mg入っているかです。

「効く量」と「安全の目安」はぶつかる

ここは正直に書きます。

ISSNがカフェインについて出している見解では、運動パフォーマンスの改善が一貫して見られるのは体重1kgあたり3〜6mgとされています。体重70kgの人なら210〜420mgです。

お気づきのとおり、この幅の上のほうは、さきほどのEFSAの「1回200mg」を超えます。スポーツ栄養で言う”効く量”と、食品安全の”単回の目安”は、そのままでは重なりません。

ではどう考えるか。同じISSNの見解には、9mg/kgのような高用量は副作用の発生率が高いわりに、効果を得るために必要とは思われないとも書かれています。さらに、最小有効量は2mg/kg程度まで低い可能性がある、とも。

つまり効果は「多いほど強い」ではないということです。下の端から始めて、足りなければ足す。上限を目指す理由はどこにもありません。

「カフェイン中毒で死亡」というニュースの正体

検索するとこの手の見出しが出てきて、一気に怖くなります。中身を確かめておきます。

日本中毒学会の調査では、2011年度からの5年間に、カフェインを多く含む眠気防止薬や清涼飲料水による急性中毒で少なくとも101人が救急搬送され、7人が心停止、うち3人が亡くなっています。

ここで重要なのは中身のほうです。心停止に至った7人は、いずれも6g以上を摂取していました。そして搬送された101人のうち97人が飲んでいたのは眠気防止薬(錠剤)で、エナジードリンクだけによるものは4人でした。

6gは6,000mgです。カフェイン300mgのプレワークアウトなら20杯分にあたります。桁が二つ違う話であって、表示どおりに1杯飲むこととは別の現象です。

怖がるべきなのは「カフェインという成分」ではなく、自分が1日に何mg摂っているかを誰も数えていないことのほうです。

今日の総カフェイン量を数えてみてください

  • ☐ 朝のコーヒー(1杯150mLで約90mg)
  • ☐ 昼食後のコーヒー・お茶(緑茶なら1杯150mLで約30mg)
  • ☐ 午後のエナジードリンク(製品差が大きい。1本40〜150mg程度)
  • ☐ トレ前のプレワークアウト(必ず製品の表示を確認
  • ☐ 眠気覚ましの錠剤・カフェインタブレット

足して400mgを大きく超えているなら、プレワークアウトを足す前に減らす場所があります。

夜トレの人がいちばん損をしている

そして、意外と語られないのがこれです。

カフェインは体から抜けるまでに時間がかかります。一般に半減期は5時間ほどとされますが、これには遺伝的な個人差があります。カフェインの分解に関わるCYP1A2という酵素の型によって、2〜4時間で抜ける人もいれば、6〜8時間以上残る人もいる。「自分はカフェインで眠れなくなったことがない」という人と「1杯で寝られない」という人がいるのは、気合いの問題ではありません。

睡眠への影響を調べた研究では、400mgのカフェインを就寝の6時間前に摂った条件でも、実測の総睡眠時間が1時間以上短くなっていました(12人の小規模な試験ですが、「寝る前だけ避ければいい」という感覚が甘いことを示しています)。

21時にジムへ入るために20時半にプレワークアウトを飲むと、就寝が1時前後でも6時間を切ります。トレーニングの質は上がったのに、回復に使う睡眠が削られる。筋肉が増えるのはトレーニング中ではなく休んでいる間なので、これは静かに損をし続ける構図です。

だから夜トレの人にとって、カフェインは「危険かどうか」ではなく「割に合うかどうか」で考える対象になります。

実際どう組むか

効果と手軽さの順に、三段階で書きます。上から順に試して、必要なところで止めてください。

① 総カフェイン量を数えて、半量から始める

無料で、今日からできて、いちばん効きます。

まず上のセルフチェックで1日の合計を出す。そのうえで、初めて使う製品は表示されている1回量の半分から始めます。動悸やそわそわが出るかどうかは、飲んでみないと分かりません。半分で足りていればそれが自分の量です。

そして、プレワークアウトを足した日は、その分だけ日中のコーヒーを減らす。足し算ではなく置き換えで考えるのがコツです。

② カフェイン量が明記された製品を選ぶ

「エナジーブレンド」のような名前でまとめられていて、個々の成分量が書かれていない製品があります。この形だと自分が何mg飲んだのかを永久に把握できません。量を管理するという話が根本から成立しないので、選択肢から外していいと思います。

⚠ 買う前に、ここだけは必ず確認してください

成分表に「カフェイン ○mg」と、1食あたりの数字で書かれているかを見てください。「独自ブレンド ○g配合」としか書かれていない製品は、カフェインが100mgなのか350mgなのか判断できません。

あわせて、その1食が何gなのか(スクープ何杯か)も確認を。「1食2スクープ」の製品を1スクープで飲めば当然半量ですが、逆に「1食1スクープ」を2杯入れると倍になります。ここの読み違いが、初回の動悸の典型的な原因です。

③ 夜トレ・カフェインが苦手なら、カフェインフリーで組む

ここが本題です。

プレワークアウトの効果は、大きく分けると「集中・覚醒」と「パンプ・血流」の二つから来ています。前者はカフェイン、後者はシトルリンやアルギニンの担当です。

そして、この二つは別々に買えます。

夜にトレーニングする人、カフェインで動悸が出る人、コーヒーをすでに1日3杯飲んでいる人にとっては、覚醒の部分をカフェインに頼らず、パンプと出力の部分だけを取りにいくほうが理にかなっています。具体的には、シトルリン・アルギニン系をトレ前に、そして土台としてクレアチンを毎日、という組み方です。クレアチンは覚醒作用がないので、飲む時刻を選びません。

Naturecan Fitness は、この「カフェインを使わない組み方」に必要なものが一通り揃っていて選びやすいブランドです。パンプパワー(アルギニン3,000mg・シトルリン800mg/1食)はカフェインを含まず、トレーニングの30〜60分前に飲む設計になっています。クレアチンモノハイドレートも同じ店で揃います。

Naturecan 公式サイトはこちら

なお、クレアチンについては「ハゲる」「腎臓に悪い」という別の噂があります。そちらは元になった研究まで遡って確かめた記事を書いているので、気になる方はこちらをどうぞ。

それでも不調が出るときの線引き

最後に、判断に迷いやすいところを整理しておきます。

やめる/減らすべきサインは、飲んだ日に動悸・手の震え・強い不安感が出る、寝つけない日が続く、という変化です。これらは「効いている」ではなく「多い」のサインなので、量を半分にするか、カフェインを含まない構成に切り替えてください。

医療機関を受診すべきラインもはっきりさせておきます。胸の痛みを伴う、意識が遠のく、動悸が長く続いて治まらない、といった場合は、サプリの調整で様子を見るのではなく受診してください。これはサプリの話ではなく体の話です。

もう一つ。カフェインをやめるときに頭痛が出ることがあります。摂取をやめてから12〜24時間ほどで始まり、1〜3日でピークを迎えて、1週間程度で収まっていくのが典型とされています。これは離脱によるもので、体が壊れたわけではありません。急にゼロにせず、量を減らしていくほうが楽です。

※本記事は特定の製品の効果を保証するものではなく、疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安がある場合は自己判断で調整せず、医療機関にご相談ください。

よくある質問

Q. プレワークアウトとエナジードリンクは何が違うんですか?

A. 覚醒の部分(カフェイン)は同じ役割です。違うのは、プレワークアウトにはβ-アラニンやシトルリンなど、運動そのものに向けた成分が加えられている点と、糖質が少ない製品が多い点です。ただしカフェイン量はどちらも製品ごとにバラバラなので、「エナドリより安全」とは言えません。両方飲むと単純に合算になります。

Q. 毎回のトレーニングで飲んでも大丈夫ですか?

A. 量が適正なら問題にはなりにくいですが、毎日続けると体が慣れて同じ量では効きにくくなります(耐性)。効かないから増やす、という流れがいちばん危ないので、勝負のセットがある日だけに絞る使い方のほうが、結果的に効きます。

Q. 空腹で飲んでもいいですか?

A. 吸収は速くなりますが、そのぶん動悸や胃の不快感も出やすくなります。初めての1回は、軽く何か食べたあとに半量で試すのが無難です。

Q. 夜トレですが、どうしてもカフェインを使いたいときは何時までですか?

A. 就寝の6時間前でも睡眠時間が削られたという報告があるので、逆算すると「就寝6時間前より後は避ける」がひとつの線になります。それが守れない時間帯にトレーニングしているなら、カフェインなしで組むほうが総合的には得です。

Q. 飲むとお腹がゆるくなります。これも副作用ですか?

A. プレワークアウト側の要因としては、甘味料(糖アルコール)やマグネシウム、シトルリンの量が多いことが挙げられます。まずは半量にして変わるかを見てください。ただし、プロテインでも前から腹を壊しているなら原因は別で、その場合は乳糖のほうを疑ったほうが早いです。切り分け方はプロテインでお腹が張る・下痢する原因の記事にまとめてあります。

Q. コーヒーで代用できますか?

A. 覚醒目的だけならできます。実際、コーヒー由来のカフェインでもパフォーマンス改善が報告されています。ただしパンプ系の成分は入っていないので、そこを求めるなら別で足す必要があります。安上がりに試したいなら、まずコーヒーで自分のカフェイン耐性を確かめるのは合理的な順番です。

まとめ

  • 「ピリピリする」「顔が赤くなる」はβ-アラニンとナイアシンによる一時的な反応で、害の報告はない。体感の強さと体への負担は別物
  • 量の管理が必要なのはカフェインだけ。EFSAの目安は健康な成人で1回200mg・1日400mg。日本に上限値の設定はない
  • スポーツ栄養で「効く」とされるのは体重1kgあたり3〜6mg。ただし高用量は副作用が増えるだけなので、下の端から始める
  • 「カフェイン中毒で死亡」の事例は6g以上の摂取によるもので、表示どおりの1杯とは桁が二つ違う
  • 夜トレの人は、就寝6時間前でも睡眠が削られる点で割に合わないことが多い。覚醒はカフェイン、パンプはシトルリン系と分けて考えると、カフェインなしで組める
  • 成分量が明記されていない製品は、そもそも量の管理ができないので選ばない

怖いのは成分そのものではなく、自分が何をどれだけ摂っているか分からない状態です。数えられるようになった時点で、この話はほとんど終わっています。

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